1977年に放送された必殺シリーズ第十弾『新・必殺仕置人』

 必殺史上最強!の中村主水と念仏の鉄のコンビ復活!

 スリル満点の緊迫感と手に汗を握るストーリー

 「これぞまさに最高傑作!」の呼び声も高く、ついに必殺シリーズの黄金期を迎えた。

 毎回、スペシャルな豪華ゲストが出演。

 頂点を極めた、戦慄が走る恐怖の「仕置の技」

 この傑作時代劇『新・必殺仕置人』の出演者の気になる現在についてご紹介します。

目次

中村主水 / 藤田まことさん

中村主水は江戸町奉行所の同心でしたが、念仏の鉄と再会し、「仕置人」への復帰によって灯火となっていた正義感が再び燃え上がりました。

 数々の剣術流派の免許皆伝を会得しており、その無類の剣術で悪人を成敗していったのです。

 演じた藤田まことさんは、父親はスター俳優だった藤間林太郎さんです。

 藤田さんは喜劇の舞台でデビュー。

 その後、主演したテレビドラマ「てなもんや三度笠」で大人気を得ました。

 しかし、コメディに乗り切れないことを感じていた藤田さんは、番組出演をすべて断ってしまいます。

 その後、しばらくキャバレー巡業をしていたのですが、運命の出会いともいえるテレビドラマの出演依頼の連絡が彼へ入るのです。

 それが「必殺シリーズ」の中村主水役でした。

 実はテレビ時代劇で初のオリジナルなヒーローで、藤田さんの決定的な当たり役となったのです。

 「納得しながら演じられた役」だと後年コメントをされていました。

 藤田さんにとって、さらに代名詞のような役がテレビドラマ「はぐれ刑事純情派」の刑事役。

 18年という長期の放送となり、人間味あふれる刑事を演じただれもが知る人気ドラマでした。

 食道がんなど病を克服して、晩年も役者魂あふれる演技を披露されていました。

 2002年、紫綬褒章を授与されています。

 20102月、大動脈瘤破裂により76歳で永眠されました。

念仏の鉄 / 山崎努さん

 山崎努さんが演じた念仏の鉄は、住職でしたが島流しにされた後、骨継ぎ師を営みながら江戸で暮らしていました。

 三度の飯よりとにかく女が大好きな色情魔。

 女遊びをやめられず慢性の金欠状態でした。

 仕置の技は必殺の「骨外し」。

 骨接ぎの技術を最大限に生かして、のさばる悪人を絶命させました。

 山崎さんは、1959年に文学座へ入団し、翌年に「大学の山賊たち」で映画デビュー。

 1963年、黒澤明監督の映画「天国と地獄」で、鮮烈な演技により注目される俳優になりました。

 同年、結婚をしておりお相手は元・宝塚歌劇団星組の黛ひかるさん。

 元東京都知事石原慎太郎さんが仲人をしています。

 70年代からはテレビドラマでも活動を開始。

 1973年には大人気TVドラマ「必殺仕置人」で、人気を誇った「念仏の鉄」を演じております。

 山崎さん本人も自分の代表作は、念仏の鉄ではないか、と語っておりました。

 「同じ役は二度と演じない」という信念をもっていたのですが、新・必殺仕置人のスタッフが、人気が低迷していた「必殺シリーズ」復活のために、必死の思いで山崎さんを説得したそうです。

 1977年、映画「八つ墓村」で、観るものを恐怖させた多治見要蔵役を熱演し、映画も大ヒットとなりました。

 80年代以降も、黒澤明監督作品映画「影武者」や伊丹十三監督の「お葬式」「マルサの女」など、多数の映画に出演しています。

 2000年紫綬褒章、07年旭日小綬章を授章。

日本屈指の演技派俳優として現在も活躍中です。

巳代松 / 中村嘉葎雄さん

 鋳掛職人の巳代松はクールでしたが、じつは人情家。

 周りからは松と呼ばれて慕われていました。

 執念深く、いつも竹鉄砲の改良を行っており、悪人どもをこれで撃ち倒していました。

 中村嘉葎雄さんは生粋のエリート俳優です。

 父は歌舞伎役者の三代目中村時蔵さん。

 俳優の萬屋錦之介さんは中村さんのお兄さんです。

 二代目中村獅童さんは甥になります。

 1943年歌舞伎の初舞台を踏んだ後、1958年には映画会社東映に所属しています。

 1964年からフリーの俳優となりました。

 この年に出演したNHK大河ドラマ「赤穂浪士」は、30%を超える視聴率を記録する超人気ドラマでした。

 1976年、女優の柴田恒子さんと結婚。

 しかし、5年後に離婚されています。

 映画、舞台、テレビドラマでの役柄も多彩で、時代劇、現代劇、サスペンス、喜劇など、様々なジャンルで存在感を示す演技力の持ち主。

 アップルコンピュータの日本CMに出演経験があります。

 2004年には、映画『いま、会いにゆきます』で、2代目中村獅童さんとも共演しました。

 80歳を超えられた現在も活躍しておられます。

正八 / 火野正平さん

 正八は絵草子屋で、性格はお調子者。

 この店の地下蔵が、じつは鉄グループの隠れ家。

 彼とおていは鉄グループの密偵をしていました。

 火野正平さんは、有名女優らと数々の浮名を流し、「女たらし」の異名が付けられていました。

 1970年代はワイドショーの常連だったのです。

 火野さんは1962年『少年探偵団』でデビュー。

 1966年の『わんぱく砦』では、大の人気者となりましたがすぐに人気は無くなり、厳しい業界の現実を知ったそうです。

 1973年、大河ドラマ『国盗り物語』に、当たり役となった羽柴秀吉役で出演しました。

 1974年に映画初出演、初主演作となった『俺の血は他人の血』に抜擢されています。

 1977年『新・必殺仕置人』をはじめ、時代劇や映画、ドラマに多数出演しています。

 NHK BS『にっぽん縦断 こころ旅』に2011年から出演。

 いつでも気取らない自然体の火野さんが、自転車で全国を旅する様子を収録した、人気のドキュメンタリーとなっています。

 「彼女がいない時期はあっても、犬がいない時期はありませんでした」

とコメントをしているほどの愛犬家の火野さん。

 現在も精力的に各方面で活躍しています。

おてい / 中尾ミエさん

女摺り師で、鉄グループの密偵をしていたおてい。

 彼女は自ら囮となって相手に接近し、仕置人たちの仕事のサポートもしています。

 姉御肌のおていを見事に演じていた中尾ミエさん。

 中尾さんは1962年、「可愛いベイビー」で、若干16歳の年齢で歌手デビューをしました。

 この曲は国民的大ヒットとなり、一気にスターへと駆け上がったのです。

 そして園まりさん、伊東ゆかりさんと共に「三人娘」でテレビ、映画で活躍をしていきます。

 俳優業でもその演技は高く評価されて、映画製作者協会新人賞を1963年に受賞。

 歌手では初めての快挙を成し遂げています。

 両親へ都内に建つ一軒家をプレゼントしており、彼女が20歳の時の大きな恩返しでした。

 テレビでは「必殺シリーズ」やバラエティー、情報番組など幅広く活動をしています。

 20111月から20202月まで、月1のレギュラー出演をしていた『5時に夢中!

一時期は、歴代最年長のコメンテーターでした。

 梓みちよさんとは犬猿の仲だったことは有名です。

 現在でも数多くのメディアに出演されています。

元締・虎 / 藤村富美男さん

 闇の組織「寅の会」の元締め・虎。

 江戸に滞在する仕置人を統率しており、彼自身も仕置人OBであります。

 仕置技は、相手の頭部を強打して絶命させるトレードマークの棍棒「物干し竿」でした。

 藤村富美男さんは、初代「ミスタータイガース」と呼ばれ、日本のプロ野球初期を代表する伝説的スター選手。

 虎を演じたときの「物干し竿」は、現役時代に使用したバットに由来しています。

 「阿修羅の藤村」と呼ばれ、ものすごい形相で、審判の判定にも食い下がっていたのです。

 年間191安打の記録は、イチローによって1994年に破られるまでのプロ野球記録でした。

 1956年、球界史上2人目となる代打逆転サヨナラ満塁ホームランを打っています。

 現役引退後はテレビ解説者、打撃コーチ、二軍監督を歴任していました。

 1974年に野球殿堂入りをしています。

 1977年、「新・必殺仕置人」で「寅の会」の元締め・虎役を演じました。

 1979年には、映画「その後の仁義なき戦い」にも出演をしています。

 1988年からは体調を崩して闘病生活を送り、19925月に75歳で永眠されました。

死神 / 河原崎建三さん

 死神は虎の会の用心棒、虎の側近中の側近です。

 彼は仕置人らも恐れる目付役でもありました。

 感情を表に出さず冷淡で、セリフは極めて少なかったキャラクターでした。

 仕置のときには、目に遮光器を装着。

 紐付きの銛で相手の首を射抜き、まさに死神のごとく狙った獲物のトドメを指したのです。

 クールな死神を演じた河原崎建三さん。

 父親は歌舞伎役者の四代目河原崎長十郎さんです。

 1968年、映画「愛奴」で俳優としてデビュー。

 1974年に知り合ってからわずか2ヶ月で、女優の大川栄子さんと結婚をされています。

 また、女優の岩下志麻さんは従姉妹になります。

 1970年代から1980年代には「銭形平次」「水戸黄門」「太陽にほえろ!」「座頭市物語」「俺たちの旅」など、膨大な数のテレビドラマに脇役で出演しました。

 そうしたなかで「新・必殺仕置人」の死神役が、唯一のレギュラー出演をした作品なのです。

 河原崎さんは現在も存在感のある名脇役として活躍されています。

嘉平 / 灰地順さん

 灰地順さんが演じた嘉平は、なぜかドラマに登場する場面が非常に少なかった虎の側近でした。

 第3話で、仕置をするターゲットのしっぽを掴む調査に失敗。

 責任を取ることとなり処分されました。

 嘉平では登場回数があまりに少なかったのですが、実は灰地さんはそのキャリアを追うと、錚々たる実績を持っている方でした。

 演出家になる夢を持っていたのですが、舞台で演技をすることがきっかけとなり、俳優としてのキャリアがスタートしました。

 出演したテレビドラマを抜粋してみますと、

「鬼平犯科帳」「変身忍者 嵐」「遠山の金さん捕物帳」「太陽にほえろ!」「イナズマン」「伝七捕物帳」「仮面ライダーX」「大江戸捜査網」「銭形平次」「赤いシリーズ」「桃太郎侍」「水戸黄門」など。

 悪役から刑事役までどんな役もこなすという、器用な役者さんのイメージがありました。

 灰地さんは多くの役者の演技指導で有名な方です。

 石田えりさん、新藤栄作さん、若村麻由美さん、松本明子さん、森口博子さん・・・。

 現在活躍されている皆さんの演技には灰地さんの指導の影響がうかがえます。

 日本の芸能を支えてきた功労者と言えるでしょう。

20181月、うっ血性心不全のため永眠。

91歳でした。

中村せん / 菅井きんさん

 菅井きんさんが演じた中村せんは中村主水の姑。

 娘で主水の妻であるりつとだらしのない主水を二人でいびっていました。

 「ムコ殿!」と叱責する場面は、このドラマの定番となりました。

 芸名である「菅井きん」は本名から取られています。

 映画デビューは1951年。

 その後は日本を代表する名脇役として、演劇やテレビドラマで引っ張りだこになります。

 1973年、「必殺仕置人」で中村せん役で出演。

 同じ年には、「太陽にほえろ!」で、松田優作さんが演じたジーパン刑事の母役で出演もしているのです。

 2008年にはついに映画初主演をした「ぼくのおばあちゃん」に82歳で起用されました。

 ギネスで世界最高齢主演女優に認定されています。

 菅井さんは2018年8月に心不全により永眠。

 92歳でした。

中村りつ / 白木万理さん

中村りつは主水の妻。

主水が婿養子だったことから立場が上であったため、肩身の狭い主水を尻に敷いていました。

 ときには主水に甘えるシーンもあったので、実は喧嘩するほど仲の良い、相思相愛の夫婦だったようです。

 白木さんは以前は「白木マリ」という芸名でした。

 俳優の沢本忠雄さんと結婚して芸能界を引退。

 しかし、離婚をきっかけに復帰をして芸名も改名。

 引退前は濃厚な色香を漂わせる女優でしたが、復帰直後の『新・必殺仕置人』の中村りつ役で、時代劇女優として広く認知されました。

 主水役の藤田まことさんとは、彼の代表作のひとつ、「はぐれ刑事純情派」でも共演をしました。

近年は北島三郎さんの舞台特別公演に出演されています。

以上、「新・必殺仕置人」出演者の皆さんの現在のついてご紹介いたしました。

最後までご覧いただきありがとうございました。